2010年11月17日水曜日

WB掲載:町田康+朝吹真理子の対談を公開中!

こんにちは、まいにち寒いですね。窪木です。
いよいよ今週末に迫った読書会ですが、イベントに先駆けて行った町田さんと朝吹さんの対談が掲載された「早稲田文学フリーペーパーWB」vol.21を配布中です。



巻頭小説は、奥泉光さん。話題の音楽ミステリ『シューマンの指』のスピンオフ短篇「Arabeske―《ダヴィッド同盟》ノート④から」をお届けします。
今号から新しく、円城塔「数学への長い道」、大澤真幸「〈社会〉の思考」、青木淳悟「わたしたちの体育」がはじまります! この機会にぜひお手にとってご覧ください!

詳しい目次や設置・配付場所はこちらに記載されています。
早稲田文学編集室公式サイト
http://www.bungaku.net/wasebun/


また、「WB」配付と同時に、町田+朝吹対談をウェブ公開します。
課題図書「宇治拾遺」と「無関係な死」について語ってもらいました。すでに予約したひとはもちろん、これからの人も必見です!
対談は、上記の早稲田文学編集室サイトでご覧いただけます。
読書会の予約はこちらから。満員間近、ご予約はお早めに!!

2010年11月12日金曜日

シミローグ読書会の雰囲気

こんにちは。間宮緑と申します。
この記事では、公開読書会第二部のディスカッションに関連して、シミローグ読書会が、ふだんはどんな感じで集まっているのかを、みなさんにお話ししたいと思います。

この読書会はふだんは月に一度のペースで開かれています。メンバーはみな一癖も二癖もあり、文学に対してひたむきで、各々いろいろな本に関心があります。児童文学、思想哲学、SF、ミステリ、古典、――といって、みんな「たくさん読んでますよ」という読書自慢はせず、「こういう本に夢中なんです!」と嬉しそうに語ってくれます。
そして議論に入ると、それぞれが個性的な読み方をしていることがわかります。仔細に分析的に読んだり、文芸批評としての意見を述べたり、思想や社会という領域から俯瞰的に捉えたり。ときには真っ向から反駁し合って、議論が白熱することもありますが、それもまた心地好いのです。

読み方の個性もさることながら、この読書会では大別して(課題図書を小説に絞っていえば)創作、批評/思想、編集という、三つの視点が加わっているのが特徴です。朝吹さんや僕のような原稿を書く者、坂上秋成君のような批評家、そして窪木さんを始めさまざまな媒体で編集に携わる人たちが参加しています。

たとえば「いかに小説を制作するか」というような論題は、ふつう、「書く」こととは、とか、どうやって「書く」か、とか、「書く」という動詞に素朴に収斂されがちですが、この読書会では、しばしば「編集」という視点からも語られています。「編集」という作業は、一種のデータである文章を「本」という物へと具体化するためには、欠かせないものです。原稿を書く人間にとっても、原稿は書いてしまったから後は関係ないよというわけではなく、物と思考とは絶えず刺戟し合っているのです。「編集」の視点からの創作論は、小説の書き手としては勿論、読者としても、とても興味深い部分です。

僕は子供のころから、周りに本の好きな人がほとんどおらず、本というものは一人で読むものだと思っていました。けれどもいまは、同じ本を複数人で読み、顔を合わせて話をするという、読書の大きな楽しみを知っています。読書会は、人に褒められるような立派な意見を発表する場でも、競うための場でもなくて、本を読んで話をする、それが楽しいんだ、という皆の根源的な気持が一番大切なことだと思うのです。公開読書会第二部のディスカッションも、そういう場になるといいな、と思っています。

僕はこの読書会に参加しているメンバーと話して、気持ちのよい人たちだなあと常々感じています。みなさんも、かれらと話すことで、いつもの読書がさらに楽しくなるかもしれませんよ。

2010年11月7日日曜日

公開読書会のコンセプトやチーム編成など

 初めまして。文芸批評をやっています、坂上秋成です。

 すでにイベント当日まで二週間を切っている公開読書会&トークイベント、おかげさまで続々と参加申し込みが寄せられています。ありがたいことでございます。
ただ、どうもツイッターでの反応を見たりしていると(自分はid:ssakagamiでツイッターにいます)、いささかハードルの高いイベントだと感じている方も多いように感じます。もちろん、課題図書を設定している以上、ただトークイベントを聞きにいくよりは多少手間のかかるものにはなってしまうのですが、さして身構える必要があるものでもないですよとメンバー一同考えています。

 第二部の公開読書会では、メンバーと参加者を三つのチームに分けて、車座の形でそれぞれの読みを展開することになります。ここではもちろん参加者のみなさんからの声もお聞きしたいところですが、強引に意見を聞き出すものではないですし、何かしゃべらないとマズいというようなものでもないです。他の人の話を聞き、思うところがあればしゃべってみようくらいで十分です。
 また、ものすごく精緻な読みを課題図書に対して行うという趣旨のものでもありません。たとえば、今回は課題図書として『宇治拾遺物語』が設定されているので、何か古典に深い造詣があったり、ガッツリ原典を読みこんでこなければいけなかったりといったことを考えてしまうかもしれませんが、実際シミローグのメンバーでも「宇治拾遺」を読むのはこれが初めてという人がほとんどです。課題図書を設定した朝吹さんも、「宇治拾遺」を現代の小説群と同じような「物語」としてフラットに読んでみたいという趣旨で選んでいるので、専門的な知識は不要だと考えてもらってだいじょうぶです。
 何が言いたいかというと、「意外とゆるゆるした空気なので気楽にきてもらえると嬉しいです」ということですね。もちろん、読者参加型の読書会を目ざしている以上、活発に議論が行えればそれは理想的ですが、今回はなにせ初回、とりあえず様子見という感じで来てもらってOKです。

 そんな感じの第二部ですが、チーム編成は以下のようになっています。
 
 Aチーム:朝吹真理子(小説家)、窪木竜也(「早稲田文学」編集者)
 Bチーム:間宮緑(小説家)、坂上秋成(文芸批評家)
 Cチーム:明石陽介(「ユリイカ」編集者)、浅井茉莉子(文芸誌編集者)、北原美那(編集プロダクシ   

       ョン勤務)、淵田仁(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程)

 とりあえず便宜的にABCとしてみましたが、そのうち何かイケテるチーム名がつくかもしれません。それぞれのチームのコンセプトはこんな感じです。

Aチーム:
 「早稲田文学」編集者の窪木竜也さんと私の車座では、いまの読書として、日本の古典籍をどうおもしろく読むのか、それをとっかかりとして、前もって議題などは決めず、とりとめのない読書の話をいっしょにしてゆければと思います。現在は、日本の古典を<ただ楽しむ>ように読むことがむつかしくなっていると私は思っています。
 安部公房作品(「無関係な死」、「なわ」)、『宇治拾遺物語』を読んだひと同士として、気楽にことばのやりとりができれば嬉しいです。
 「読む」ことは、基本的に、ひとりきりの行為です。同じ本をいっしょに読むことはできても、「読む」こと自体はめいめいの行為でしかありえません。だからこそ、読書はすばらしいのですが、ひとりきりでふだん味わっている作品のはなしを、ゆくりなく出会ったひとびとと交流するのもまた愉しいことであろうと思います。公開読書会で、あたらしい読みの小径をたがいに発見し合うことができたら、家に帰ってからまたはじまるひとりきりの読書がより刺激的な行為になるのではないかなと思います。(朝吹真理子)


チームB:
 「2010年という時間の中に、安部公房の短編と『宇治拾遺物語』を置くとどのように映るのか」、そのような視点からぼうやりと言葉をつむいでいければと思っています。それは時間軸をかなりの程度無視して、同じ平面で複数の作品を語っていくということなので、やはり強引な読み方に見えてしまう部分もあるはずです。
 しかし、正しい読みを行うことが重要である(もしそれがあるとすれば)のと同じように、奇妙な文脈の中に作品を置き直し、これまでなかったような読みを発見していくこともまた、読書や批評のの悦楽であるように思います。
 課題図書をベースにしつつ、最近の小説の話や、創作に関わる話まで、広くゆるやかに展開していくつもりです。(坂上秋成)

チームC:
 安部公房「無関係な死」の時間の伸び縮みと歪み、「なわ」の没入を妨げる装置と語り手を、作者不明で現代では文体の受け取りがほぼ不可能になってしまったにもかかわらずなおも「読ませる」、プリミティヴな物語としての「宇治拾遺」を補助線に引きながら考えてみたいと思います。


それぞれの関心に合わせて座る場所を選んでみてください。途中での移動もできますので、全体を見て回るのも面白いかもしれません。

今回はそんな感じで。まだ未定ですが、トークイベント&公開読書会のあとには秋葉原近辺での食事会なども考えています。愉しい交流の時間が過ごせることを楽しみにしています。